月100億トークンを使いこなすビズリーチに学ぶ!AI活用の費用対効果と組織変革のヒント

AI活用が次のフェーズへ:導入から費用対効果の評価へ
生成AIの導入が進む企業において、次の課題は「AI利用の費用対効果をどのように評価するか」に移りつつあります。AIエージェントなどの高度な利用が広がるにつれて、AIの処理量を示す「トークン」の消費量が増加し、AIサービスの利用料がかさむ中で「AI活用の推進」と「ビジネスの成果」のバランスに悩む担当者も少なくないでしょう。
そんな中、月間約100億トークンを消費するビズリーチの執行役員 CTO 外山英幸氏は、「AIの使用量が増えるほど、生産性も伸びる傾向がある」と語ります。では、この「生産性の改善」を投資に見合うビジネス成果につなげるにはどうすれば良いのでしょうか。ビズリーチの事例から、そのヒントを探ります。
ビズリーチのAI活用3段階と「量から質、そして組織成果」への道のり
ビズリーチでは、AI活用を以下の3つの段階で進めてきました。
- 個人活用: 約1年半前から全社員が「Gemini」を利用できるようにし、利用を促した結果、週3回以上利用する社員が95%を超えるまでに利用率が向上しました。
- 全社展開: 利用量の増加に伴い、「量は増えたが、質はどうなのか」という課題に直面。そこで「AIチャンピオン」を設けたり、コンテストを開催したり、コミュニティー内で活用事例を共有したりすることで、「良い使い方を組織全体へ広げる」取り組みを行いました。
- 組織成果: 現在取り組んでいるのは、全社展開の先にある「組織成果」のフェーズです。AI前提で組織を再設計し、成果を出すことを目指しています。業務の一部では「工数80%削減」「生産性200%向上」といった成果も出ていますが、会社全体で見ると10〜20%程度の改善にとどまるケースが多いとのこと。AIへの投資に見合う「組織全体がパラダイムシフトした」といえるレベルまで変革するため、組織設計の見直しを進めています。
特に、外山氏が室長を務める「AI Product Studio室」では、OpenAIのAIコーディングツール「Codex」を活用し、AI利用量とプロダクト開発の生産性を継続的にチェック。「AIを使う量が増えるほど、生産性も伸びる傾向が確認できている」と強調しています。
AI投資の評価基準:アウトプットからアウトカムへ
AI投資の評価は難しいテーマですが、OpenAI Japanの宇都宮聖子氏とビズリーチの外山氏は、その考え方を共有しています。
- ビジネスKPIでの評価: OpenAI Japanの宇都宮氏は、トークン数の量ではなく、「売り上げが伸びたか」「採用人数が増えたか」といったビジネスのKPIで見るべきだと述べています。
- アウトプットからの評価: ビズリーチの外山氏は、理想は売り上げや契約数といったアウトカムで評価することとしつつも、現状ではアウトカムだけで見るのは難しい面もあるため、まずはアウトプットで測ることを推奨しています。例えば、プロダクト開発であれば、ソースコードの変更点を通知する「プルリクエスト」の数など、チーム全体でアウトプットが増えているかを確認することから始めるのが良いでしょう。AIによってアウトプット量は確実に増え、開発サイクルも短縮されるため、改善サイクルを回しやすくなるメリットがあります。
AI活用によってアウトプット量が増え、開発サイクルが短縮されることで、迅速なフィードバックと改善が可能になります。このサイクルを回すことが、最終的にビジネスのアウトカムへと繋がる第一歩となるでしょう。
試すならどこから始めるか
ビズリーチの事例から見えてくるのは、AI活用を「個人活用」から始め、その利用率を上げることで「量」を確保し、次に「良い使い方」を共有・展開することで「質」を高め、最終的に「組織全体での成果」へとつなげるという段階的なアプローチです。
もしあなたの組織でAI活用を進めるなら、まずは社員一人ひとりが日常業務でAIを使える環境を整備し、利用を促すことから始めてみましょう。そして、利用が進んだら、どのような使い方が効果的か、どうすれば生産性が向上するかを共有し、組織全体で知見を深めていくことが重要です。最終的には、AIを前提とした組織設計や業務プロセスの見直しを行い、ビジネスのアウトカムに直結する成果を目指していくのが良いでしょう。
トークン消費量と生産性の相関関係に着目し、具体的なアウトプット指標から評価を始めるというビズリーチのアプローチは、多くの開発者やWeb制作者にとって、AI投資の費用対効果を考える上で非常に実用的なヒントとなるはずです。


