AIエージェント導入の壁を突破!ServiceNowの新機能でデータ連携とガバナンスを強化

AIエージェント導入の「データの空白」を埋めるServiceNowの新機能
AIエージェントが業務に深く組み込まれる時代が到来しつつありますが、多くの企業が直面する大きな課題があります。それは、システムや部署ごとにデータがサイロ化し、ガバナンスが十分に整備されていないために、AIエージェントが「推奨はするが実行はできない」状態に陥ってしまうことです。つまり、AIに意思決定させたいのに、必要なデータにアクセスできなかったり、アクセスできてもそのデータが正しく統制されていない、という「データの空白」問題です。
ServiceNowは、このAIエージェント導入における喫緊の課題に対応するため、年次イベント「Knowledge 2026」で画期的な新機能群を発表しました。これらの機能は、リアルタイムかつガバナンスを確保した企業データを基盤に、自律型AIを業務で効果的に運用するためのデータ機能群が中心となります。
何ができるのか?AIエージェントを動かす「脳」と「手足」
今回発表された機能群は、データ基盤、分析、ガバナンス、エージェント制御の4つの領域にまたがり、AIエージェントが自律的に、かつ安全に業務を遂行するための包括的なソリューションを提供します。
AIに「文脈」と「知性」を与える機能
- Context Engine:組織の人材、役割、資産、サービス、ポリシーをリアルタイムでマッピングし、業務フローに組み込まれたビジネスコンテキストをAIに供給します。システムの動作履歴から継続的に学習するため、実行回数を重ねるほど精度が向上します。
- Autonomous Data Analytics:ServiceNowが買収したPyramid Analyticsの技術を活用し、ユーザーやAIエージェントが自然言語で組織内のデータに問い合わせ、結果を即時に取得できます。
データとAIの「ガバナンス」を確立する機能
- Autonomous Data Governance:データ資産を継続的に監視し、品質違反を自動でフラグ立てします。セキュリティやプライバシーに関するポリシーをリアルタイムで適用します。
- ServiceNow MCP Registry:企業向けのプライベートなMCPレジストリで、オープンソースの「MCP Registry API」をベースに構築されます。AIガバナンス管理機能「AI Control Tower」を通じて管理され、承認済みMCPサーバの社内カタログを提供。AIエージェントは審査済みリソースのみを検出、接続でき、アクセス時点で制御を強制します。
- ServiceNow AI Gateway:エージェント型ワークロードのリアルタイム制御を担うセキュリティゲートウェイです。ガバナンス、オブザーバビリティ、セキュリティの観点から外部のAIシステムを統合的に監視します。
システム間の「データ連携」を強化する基盤
- Workflow Data Fabric:システムやワークフローをまたいだデータ連携の基盤となります。
- ServiceNow Data Catalog:自動化された発見、リネージ追跡、共有ビジネス用語集を通じて、組織のデータ資産全体の可視性を提供します。既存のデータカタログと統合できるため、置き換えなしで運用できます。
- RaptorDB Proの拡張機能:AIプラットフォーム「ServiceNow AI Platform」のネイティブデータベースを拡張しました。
- Live Perform:運用ワークロードと分析ワークロードを同一データベースで同時に処理します。
- Live Connect:Pyramid Analyticsや他のアナリティクスプロバイダーがServiceNowのライブ運用データに直接アクセスできるようにします。
- Live Archive:低コストのストレージから履歴データとライブデータを一括してクエリできます。グラフデータや時系列データのマルチモーダル処理もネイティブにサポートします。
AIエージェントの「実行力」を高める機能
- ServiceNow Otto:AI対話エージェントで、自然言語の指示で複数システムにまたがる業務を完遂する役割を担います。
- Workflow Data Network Partner Passport:新設したパートナー連携の仕組みです。既存のData FabricクレジットでIBMやBoomiをはじめとする認定パートナーの対象ソリューションを利用できます。データやAI、ワークフローを単一の商取引契約に統合します。
どう使えるのか?開発者がAIエージェントを「実動」させるために
これらの新機能は、開発者がAIエージェントを単なる「推奨エンジン」から「自律的な実行エンジン」へと進化させるための強力なツールとなります。
- データのサイロ化を解消し、AIの意思決定を支援:
「Workflow Data Fabric」は、まさに開発者が頭を悩ませるシステム間のデータ連携の課題を解決します。この基盤の上で「Context Engine」がリアルタイムなビジネスコンテキストをAIに供給することで、AIエージェントはより正確で状況に応じた判断を下せるようになります。例えば、顧客サポートのAIエージェントが、CRM、ERP、過去の問い合わせ履歴など、散在するデータからリアルタイムに情報を統合し、最適な解決策を提示し、さらに実行まで完遂できるようになります。 - 自然言語でデータにアクセスし、開発工数を削減:
「Autonomous Data Analytics」は、AIエージェントだけでなく、開発者自身のデータアクセスも変革します。複雑なSQLクエリを書くことなく、自然言語で必要なデータに問い合わせて即座に結果を得られるため、データ分析のための開発工数を大幅に削減できる可能性があります。 - AIエージェントに「実行」を任せる:
「ServiceNow Otto」は、自然言語の指示だけで複数のシステムにまたがる業務を完遂します。開発者は、個別のAPI連携やワークフローを細かく構築する代わりに、Ottoに高レベルな指示を出すことで、AIが複雑なタスクを自動で実行するシナリオを設計できるようになります。例えば、ユーザーからの問い合わせに対して、情報検索、チケット作成、関連部署への通知といった一連のプロセスをAIが自律的に実行する、といったことが可能になります。 - ガバナンスとセキュリティをコードレベルで担保:
「Autonomous Data Governance」や「ServiceNow AI Gateway」、「ServiceNow MCP Registry」は、AIエージェントが利用するデータや外部AIシステムに対するガバナンスとセキュリティを確保します。これにより、開発者はセキュリティやプライバシーの懸念を最小限に抑えつつ、AIエージェントを本番環境に安心してデプロイできるようになります。
キウイフルーツ販売大手Zespriのティム・ロイド氏(デジタル運用責任者)は、新機能群について「ServiceNowプラットフォームとAI機能の価値は、人がどう働くかにあり、基幹業務システムを置き換えることではない。当社のERPと運用プラットフォームをまたぐデジタルワークフローレイヤーとして機能している」と述べています。これは、既存システムの上にAIエージェントの層を構築し、システム間の連携を強化することで、業務効率化と従業員の協業を促進するという、開発者にとっても非常に現実的なアプローチを示唆しています。
試すならどこから始めるか?
これらの新機能は、既に一部が提供開始されています。
- Workflow Data Fabric with ServiceNow Otto
- ServiceNow Data Catalog
- RaptorDB ProのLive Connect、Live Archive、Live Perform
- ServiceNow MCP Registry(Innovation Lab経由)
特に、AIエージェントの基盤となる「Workflow Data Fabric」と、実際に業務を完遂する「ServiceNow Otto」は、AIエージェントの実装を検討している開発者にとって、まず触れてみるべき機能でしょう。データ連携の課題解決と、AIによる業務自動化の可能性を肌で感じることができるはずです。
「Autonomous Data Governance」や「Workflow Data Network Partner Passport」は2026年後半の提供を予定しており、「MCP RegistryにおけるA2A(Agent to Agent)エージェントカードのサポート」も2026年に提供開始予定です。まずは提供開始済みの機能から試行錯誤を始め、将来の拡張に備えるのが賢明と言えるでしょう。


